猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
蓮は一度力強く唇を押しつけると、彼女を押し倒した。
優しく重ねられた唇はすぐに貪欲なものに変わり、一花は唇を開いてそれに答えた。
唇が白いうなじを下へ降りていく。
彼の熱い手が素肌に触れる度に身体が跳ねて敏感に反応する。
いつの間にかその手が器用に下着を取り去っていた。
「きれいだ」
心臓から送られる血液がドクドクと蓮の体中を駆け巡っていた。
本当はもっと違う時と場所を考えていた。
彼女のなかで五年前の恋愛とどう決着がついているかを確かめ、どこかホテルのスイートでロマンチックな演出の中で……
だが、これ以上考えるのは無理だ。
今は甘い吐息や恥じらいながら喘ぐ姿に彼女を求め奪うことしか考えられない。
蓮が白い双丘を味わうと肩にしがみつく手に力が込められた。
我慢できずに蓮は脈打つ近くに赤い印をつけた。
一花は…いや、初花は俺のものだ。
蓮はハッとした。
自分が求めていたものの正体が今わかった。
「初花」
名前を囁く甘い響きに一花は瞳を開けた。
「これから君は俺の前では初めての花だ」
「蓮さん……」
一花もまた彼の言わんとする事を理解した。
彼が欲しいと言ったのはモデル一花ではなく
初花だと。
初花の瞳から涙が溢れだした。
もう何年も一花として過ごしてきた。
『くどういちかになって』マッキーも言っていた。
初花は涙を優しく拭う手の上に自分の手を重ねた。
「蓮さんが私のことを『俺のモデル』って言うの気に入っていたのに」
初花が微笑むといきなり情熱のこもったキスをされた。
「君は俺のモデルだ」
「じゃあ、あなたは私のレーサーね」
初花は同じように情熱を込めてキスを返した。
「五年振りにしては上手いじゃないか」
「たぶん相手がいいのよ」
「多分だと?」
「きゃっ」
蓮は彼女の両腕を頭上に縫い付けた。