猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

東堂美桜(とうどうみおう)は元々幼馴染みの大親友で嬉しい事に義妹となった日向(ひなた)からの情報を得て、タキさんにスパイしてもらうこと一週間。

虎視眈々とその日を待っていた。

兄のしている事はいつもの遊びの延長なのか
それとも本気なのか。

そして今朝タキさんから『そろそろ良し!』の報告がきた。

さあ、私の出番よ。

義父で大好きな東堂のおじ様がどんな瞳(間違いなく雲っていたはず!)で見たのか知らないが、兄のために見つけた女性には我慢ならない。

「もう!!」
美桜はその場で一度足を踏み鳴らした。

先日の日向の新作パーティーでは、信じられないほど図々しい彼女の態度に軽く殺意が芽生えた程だ。

勝手に将来の姉だと触れ回り、絢士さんに馴れ馴れしく(違うわ!あれは馴れ馴れしいを通り越して明らかな色目だった)話しかける彼女にどれだけイライラしたことか。

勿論、日向もその被害に遭って私以上に怒りの炎を燃やしていた。

新作ドレスが彼女に似合うなんて寝ぼけたことを!!

だから私たち姉妹は結託した。
あんな高慢で勘違い甚だしい人が義姉になるなんて、絶対に許さない。

私には蓮のように人を惹き付ける魅力も天性の勘もなければ、陽人のように素晴らしい頭脳や忍耐強さもないけれど、心の声が間違っていた事はこれまで一度もなかった。

蓮があの彼女を気に入るなんてこれっぽっちも信じてないけれど、彼女が大河内のオババまで味方につけようとすると聞いたからには、心の声に従って私も行動を起こさなければならない。

そこでふと思った。

零華伯母さまはどうして私にそれを教えてくれたのかしら?あの女性の血筋に問題はないってわかっていたのに。

美桜の中で一つの可能性が浮かんだが、あのオババに限ってそれはありえないと直ぐに打ち消した。

陽人の知り合いだという麻生の本宅にいる彼の人は、地球の反対側にいる陽人の情報によればあの傲慢女に関する意見が私たちと同じだそう。

早急に何とかしないと!
この瞳で確かめて物事を正しい道に導かなければいけないわ。

美桜は決意を新たに実家の玄関に立った。


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