猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

落ち着いたほうがいい。

自分の心に言い聞かせ蓮は軽く息を吐いた。

こんな短い時間で恋に落ちるなんて馬鹿げている。
しかし、もっと彼女を知りたいと逸る心を止められず、自然と言葉が口からついて出る。

「なぜ?情報は大切だと思うが?」

「そういうものはアクセサリーと一緒。装飾品に頼っていると本来の姿を見誤るわ、そう思いませんか?」

蓮がずっと求めてきた言葉を彼女はいとも簡単に口にする。逸る気持ちを抑え込むように蓮はひとつ咳払いして続けた。

「そうかな?」

「ええ。それに私だけではなくて」

一花は微笑んで右手を自分の胸に当てた。

「ここにもあると思いますよ?」

そう言ってもう片方の手を蓮の胸に当ててきた。

その瞬間、蓮の胸に甘く鋭い痛みが走った。
痛みは突き刺さるのではなくじんわりと温かく広がり、柔らかく心の全てを覆った。

アクセサリーは必要ないと

それは本来の姿ではないと

今までどれほどその答えを相手に求めてきただろう

彼女とならばこれまでとは違う関係が築けるだろうか?

それともこれはただの上辺の言葉でまた同じ事の繰り返しになるのだろうか?

……いいや、違う

これまでどんな女性に会ってもこんな風に感じたことはない。

彼女の言葉を借りるなら、俺の心の瞳が彼女の中にはダイヤモンドが入っているのだと告げている。

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