猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「えー?!朔也さんの妹って、モデルの一花さんだったの?!陽人も高塔さんも何も教えてくれなかったのよ!ってことは……じゃじゃ馬な妹って一花さんの事だったのね」
「兄はあの通り余計な事は言わない主義だし、私は家族に迷惑をかけないように隠していたから。私も陽人から美桜さんの事は聞いていました。見た目からは想像できないお転婆だって」
一瞬、変な間があってお互い確かめるような疑いのまなざしを向けた。
「お転婆ですって?」
「じゃじゃ馬って言った?」
初花はムッとして、今度兄に会った時は必ず文句を言ってやろうと頭の中にメモした。
彼女の方を見ると同じことを考えている顔をしている。
それにしても私が陽人と親しいように彼女は兄と親しい様だ。
あれ?!それってもしかして……
「えっ、待って。嘘でしょう?!もしかしてあの頃の兄の彼女って……」
初花は心の声をそのまま口にした。
その昔、兄の彼女について陽人と兄が揉めているのを見たことがある。
ハッとした絢士の視線に美桜は慌てて否定した。
「違うわ!それは日向よ!」
「なんだって!」
絢士は眉を吊り上げて初花を見た。
「あの……」
初花が戸惑いの表情で美桜を見る。
「この人、その日向の兄なのよ」
美桜はすまなさそうに肩をすくめる。
「えっ!?」
「君の兄貴は今何をしてる?」
「えっと……」
初花が答えようとする前に、背後から鋭い声がした。