猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「ほら、そこのブラコン!この熱い想いに黙ってないで何とか言ったら?」
「誰がブラコンよ!」
「私は一花を信じるわ、少なくともあの傲慢な女よりも服が似合うしね」
日向がわざと睫毛をパタパタさせて身体をしならせた後、おえっと吐く真似をすると美桜は吹き出した。
「もう、私だって信じるわよ」
肩の力を抜いて美桜は初花に小さく笑った。
「ありがとうございます」
初花は知らずに詰めていた息を大きく吐き出した。
「ねぇーあのさ、その敬語やめない?」
日向はソファーに座って肘掛けにもたれて寛いだ姿勢になった。
「え?」
「そうよ、私たちの方が一つ年下なのに」
「あっ、そうですね……」
「ですねって」
日向がガクッと肘掛けからこけた。
「折角いいお友だちになれそうなんだから、もっとフランクに行きましょう」
美桜が微笑んだ。
「お友だち?」
「もう美桜ったら、姉妹でしょ?」
日向がウインクすると、初花は狼狽えた。
「まさか!!そんな図々しい!」
心の声を今回ばかりは隠すことなく叫んだ。
「なるほど。今のが素の一花って事ね」
「そうね」
二人はアイコンタクトで頷きあった。
初花はそれを見て少し不快になった。
「素じゃない私について何か知ってるのね」
挑戦的な瞳の初花に二人はにんまりとした。
「ひな!ほら、あの女性はなんて言ってたかしら?」
「一花の事?えっーと……」
日向は初花を見てわざとらしく戸惑った顔をした。
「セレブ狙いの勘違い女?」
言ってから肩をすくめる。
「は?!」
驚きで初花の瞳が真ん丸になる。
「違うわよ、セレブ狙いの……」
『あ・く・じょ』と美桜が人指し指で空を指して小首をかしげた。
「なんですって?!」
初花は日向と美桜を交互に見て瞳を白黒させた。
「そうそう!あの女みおに向かって、
『美桜さん、お兄さんをたぶらかそうとしているモデルの悪女には気を付けないとぉ。妹なんだから、ちゃんとしてくださいねぇ』だって、アハハハ」
日向は彼女の口真似をし、あの時の苦虫を噛み潰したような美桜の顔を思い出してお腹を抱えて笑った。
「いつかあの睫毛を剥いでやるわ!」
美桜が怒りを露にソファーにどすっと座る。
そこまで聞けば話題の女が誰なのかは言わずもがな。
初花は拳を握りしめた。
「麻未ね!!あの女!」
「キャー!一花がキレたわよ!」
「ほら、頭痛の種は一緒で合ってたわ」
美桜はにっこり微笑んでタキさんが用意してくれたミルクティーのカップを初花に向かってかかげてから、優雅に飲んだ。