猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「偶然が重なったの、蓮さんは運命だなんて言うんだけど……」
二度目は撮影していた公園で、三度目の墓地での出会いの時にあの気味の悪いメールを受け取った。
あの日の偶然には心から感謝している。
もし一人で立ち向かわなければならなかったら……
そう考えただけで気分が悪くなる。
今こんな風にストーカーに対して落ち着いた生活を送れているのはここにいるから。
もし一人だったら怯えて神経をすり減らしながら毎日を送って、それが追い詰められた表情となって遅かれ早かれ仕事を失っていたと思う。
二人が黙って聞いてくれたので、そこまで一気に話した。
「蓮さんに『解決するまで家には帰るな』って言ってもらって、甘えさせてもらっているんだけど」
初花は長い息を吐いた。
こうして二人に話すことで、改めて自分の気持ちを見つめ直せた気がする。
蓮さんに護られている。
改めてそれを意識した。
『はあーっ』と東堂ヒナタの深いため息が聞こえた。
妹さんはすくっと立ち上がってその場を行ったり来たりし始める。
初花の心に重い石がのしかかった。
やっぱり図々しいって思われた?
そうよね、麻未の言うようにセレブ狙いって思われて当然かも知れない。
「……ごめんなさい」
今にも泣き出しそうな顔の初花に気づいた日向は、彼女にガバッと抱きついた。
「蓮兄がいて本当に良かった。もう大丈夫よ、私たちもついてるわ!ね?」
日向の言葉にハッと立ち止まった美桜は駆け寄って初花の手をぎゅっと握った。
「そうよ。ずっとここにいて、何年かかっても無事に解決するまでここにいて」
「……あり…が…とう」
ふいに込み上げてきた別の感情に、初花はなすすべもなく呑み込まれた。
「おやおや」
新しくお茶を持ってきたタキは美桜に向かって『作戦は成功のようですね』とウインクした。