猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「さて」
にいーって笑った日向が初花に詰め寄った。
「な、なに?」
「なにって、ガールズトークの時間よ!さあ、白状するのよ、蓮兄はどんな感じなの?」
「もう、ひなったら」
「あ、この人は透明人間ね。何なら出ていってもらうけど」
「へ?」
透明人間とか何を言っているのか理解できない初花はキョトンと二人を見つめた。
「いやよ、私だって蓮が本気になったらどんな感じになるのか知りたいわ」
「は?えっ?ええーー!」
蓮さんの本気って!
二人の会話を理解した初花は顔を赤くし驚いた。
「みおは甘やかされてるじゃない」
「それはひなも同じでしょう?それに甘やかされてるのと甘い言葉をかけられるのとでは違うわよ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「「なに?」」
迫力ある顔に同時に振り向かれて、初花は一瞬怯んだ。
「もしかしてだけど、惚気話をしろって言ってるのかしら?」
「「そうよ」」
「い、嫌よ!」
時々ジェニーやマッキーのダーリンの自慢を聞くことはあったけど、自分のそういう話は苦手というか、彼の妹さんを前にしてなんて言えるわけがない。
「ほら!みおのせいよ」
「わかった、透明人間になるわ」
美桜はテーブルを挟んだ向かい側のソファーに座った。
いえいえいえ。
初花は美桜に首を振る。
「そうじゃなくて」
その縮こまった態度に日向はまさか!という顔をした。
「一緒に暮らしていながら、何もないなんて言わないわよね?」
「やだ!そうなの?!」
美桜の顔も心底驚いている。
そこを疑うって……
「そんなことないけど!!」
ぶんぶん首を振って否定してから、ハッとして赤い顔が一層熱くなる。
「そうよねーあの蓮兄さんだもの」
兄さん!
そうよ、彼女だってお兄さんがいる。
「待って!ヒナタさんだって嫌でしょう?」
「何が?それとひなたでいいわよ、もしくはひな」
ひなたって日向よって空で漢字を書いた。
「あ、私もみおうでもみおでも。美桜は…」
「美しい桜」
「あら、蓮に聞いた?」
「ええ。じゃあ私もいちかで。でもいちかは本当は初めての花って書くの」
『へえー』って言ってから二人はわくわくした顔を初花に向ける。