猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「あの、どうかしました?」
彼が黙ったままなので、一花は何か変な事を言ったのかと不安になった。
「君はアクセサリーは好きじゃない?」
蓮はあえて彼女を見ずに質問した。
「えっ?」
「自分が身に付けるのは好き?」
「ああ。そうですね、たくさん欲しいとは思わないかな……でも、」
一花は見上げて蓮と視線を合わせると、大きな瞳に悪戯な色を見せながらふふっと笑った。
「欲張りなやつだと、兄や陽人には言われます」
なるほど。
蓮は月に向って微笑み、心の中でため息をついた。
まだ見ぬ相手は突然あらわれた。
これは間違いなく運命だろう?
ならば逆らう事は出来ない。
蓮は彼女のほっそりとした白い手をとり、そのまま腕の中に引き寄せた。
隙間なく重なった身体はパズルの最後のピースのように二人の身体をしっくりとおさめた。
「あっ……」
急に抱きしめられた事だけでなく、心の中でカチリと嵌まる音が聞こえたような気がした事に一花は驚いた。
「あ、あの…、」
蓮は一花の問いかけに答えを発する時になって、自分が息を止めていたことに気づいた。
短く息を吐くと心が安らぐような彼女の甘い香りをゆっくり吸いこんだ。
「オレは蓮」
「れんさん?」
戸惑った声で一花が彼の名前を言うと、抱きしめる腕に力がこもった。
「蓮でいいよ」
強く抱きしめられているのに不思議と苦しくない
それどころか緊張がほぐれていくのを感じる
こんなの……
一花はこの状況から来る自分の感情が怖くなった。