猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

その日の夜ベッドで仕事の資料を読む彼の隣で、初花は一日を振り返っていた。

美桜と日向とはずっと昔から親友だったようにおしゃべりして買い物だって心から楽しめた。

美桜のお店で見つけたアンティークの銅製の猫を東堂さんも欲しがっていたと聞いて、電話で本気で交渉した時もやりとりを心から楽しんだ。

「ふふっ」

コトンと肩に頭を乗せると彼が本から顔を上げる。

「ん?やけに機嫌がいいな?メールが来なかったのか?」

「そういえば今日は来てないです」

「何があった?」

「友達が出来ました」

「友達?」

「東堂日向さんと美桜さん、それに…」

「はっ?!あいつらが来たのか?」

彼は驚いてから片手を額に当てて手で瞳を隠した。

「ええ……あの……」

もしかして困ってる?

内緒の関係って、ストーカー対策で私の身内にってだけじゃなかったの?

「えっと……美桜の旦那様にも会ったの」

ハッと瞳を開けて、彼はまさか!という顔をする。

「あいつは仕事サボって何をしてるんだ!」

蓮がバンッと資料を閉じた。

「何か言われたのか?」

声は冷静だけれど、瞳は明らかに不機嫌になっている。

やっぱり……
そうなんだ……

麻未対策とか言っていたけれど、家族にまでオープンにするつもりではなかったんだ。

いくら恋人と口では言っても彼はASOの社長なのよ、簡単に考えてはいけないんだわ。

馬鹿ね、自分で美桜に言ったんじゃない。

事情があってここに居させてもらっているだけだって。

勘違いして家族の一員みたいにしていたら、
図々しい麻未と変わらなくなってしまう。

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