猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「別に。私はいつだって正しいと思う事には同意しているつもりよ」
「私がいつ間違っていたのよぉ!あなたが間抜けだから忠告してあげてるのにぃ、聞く耳をもたないから」
「はいはい」
ちょっと見直すとすぐこれだもの。
「元気そうで安心したわ、はいこれ」
初花はジェニーから預かったメモをぞんざいに渡した。
「なによこれ?」
「ジェニーからのお見舞い。あなたなら見ればわかるって言ってたけど?」
麻未はメモを見て内容を理解したのか瞳を大きくした。
「こんなもの……」
「あら、いらないのなら……」
初花が手を伸ばす前に麻未はサッと枕の下にメモを隠した。
「取り合えずもらっておくわ」
「あ、そう」
内心の笑みを隠して、初花は自分の用意した保湿クリームの瓶を出した。
「これマッキーが開発を手伝って来月販売するものだけど、私だけ先にもらってたの」
実は体の堅い麻未。
それを知っていたのでわざと足元に置く。
「すごくいい匂いなのよ」
香りに癒されることだってあると思う。
そう思ったからこれを選んで持ってきた。
「ちょ、ちょっと!」
口を尖らせて手を伸ばす麻未に笑っていると、
ノックする音に続いて和服の女性が入ってきた。
年の頃からいって麻未の母親かしら?
ううん、違うと思う。
綺麗な黒髪を結い上げて凛とした佇まいのその人は、
ちょっと冷たくて怖い印象。
「麻未さん、お加減はいかが?」
「零華さん!」
身内?親戚なのかな。
「ビックリしましたよ、一体どうしてこんなことになったんですの?」
「それが……」
悔しそうに唇をぎゅっと結んだ麻未に代わって、初花が答えた。
「ヒールが折れたんでしょう?」
励ますように膝の辺りを軽く叩くと、麻未は頷いて続けた。