猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

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あの女は罰を受けた。

ぎゃあぎゃあと彼女を苦しめる雑魚は、二度と僕の邪魔をしないだろう。

彼女を守る事が出来た。
これで僕と彼女の間の邪魔をする悪者が一人消えた。

男は満足の笑みで深くうなずいた。

報酬として至福の時間がもたらされたのだから、
やはり僕のしたことは正義だった。

物語のヒーローは僕だ。

だが、僕のお姫様はまだあいつに騙されている。
あの優男はいつ正体を現すつもりだ?

魔女は何をやっているんだ!
蛙を王子にしたところでお姫様は僕のものなのに。

ー『真実の愛はそう簡単には気づけないの』

頭の中で母の声がする。

ー『悪い魔法にかけられても、勇敢なお姫様の心は騙されないの』

そうだ!
いつだってヒロインは最後に本当の愛に気づく

今はまだ中盤だろう

男は新たな試練に立ち向かう勇気を得るために、
今日手に入れた戦利品を鞄から出した。

うっすらと紅の残るペットボトルから一口水を飲むと、大切に冷蔵庫にしまった。

黒猫は気に入ってくれただろうか

彼女の喜ぶ顔を直接見たかったが、お姫様を守るナイトの存在を知ってもらう為には仕方ない

あの黒猫達を見れば、僕がずっとそばに居たことに気づいたはずだ。

きっと彼女はナイトの存在に安心して話すはずだ。


「もうすぐだからね、僕のお姫様」

男は壁の写真に向かって微笑んだ。



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