猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
その日の夜は久し振りにマッキーと飲もうと約束をしていた。
電話で場所の話していたら、美樹さんとマッキーの側にいた雅人くんも参加することになって、それぞれの予定を済ませて和風居酒屋の個室で待ち合わせた。
「お待たせー」
マッキーが向かいに座る。
「ううん、私も今来たところ。他の二人は?」
「雅人はすぐに来るわよ。あらっ美樹さんもいるわ、あーこっち、こっち!」
二人が入ってきて席につく。
「麻未さんどうだった?」
隣に座った美樹さんが心配そうな顔で初花を見た。
「うん、いつも通りにしてたけど……」
あえて言葉にしてなくても、三人は理解してくれたようだ。
「そう……」
「いると腹が立つことも多いけど、居なくなるって思うと寂しいわね」
マッキーがしみじみ言って隣の雅人くんの肩をポンポンと叩いた。
「そうですね。それにしても運が悪いですね、ヒールが折れたところに瓶があったなんて」
「ほんとよね」
『誰かに押された』あの麻未の悔しそうな顔はあながち嘘じゃないような気がして、初花は思い出して身震いする。
「一花ちゃん?」
美樹さんに『大丈夫?』って顔をのぞきこまれて、慌てて首を振る。
「あ、うん。もし私だったらって考えたら、他人事で済ませられないなって思って」
皆を信用してない訳じゃないけど、変な噂になって麻未を傷つける事になっても嫌だし、押されたっていう話はやめておくことにした。
「そうよね」
「怪我をした上に、仕事を失っちゃうなんて途方に暮れるわ」
しんみりした空気になると『失礼します!』と場の空気を変える元気な声で店員さんが飲み物や食べ物を運び込んできた。
「すみません、勝手に注文しときました」
気を利かせた雅人くんが、店員さんから生ビールを受け取ってマッキーと美樹さんの前に置いて私の前にはカクテルを、自分にはウーロン茶を置く。
テーブルにはマッキーの好物のお漬け物や焼き鳥に野菜中心のメニューが何品か並べられた。
「これだからこの子を手離せないのよ!」
「はい、そうでしょうとも」
隣からマッキーに抱きつかれても、雅人くんは慣れた手付きでそれを解いてマッキーの手にジョッキを持たせた。