猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「あ!あそこにいらっしゃるわ!」
雑踏の中からはしゃぐような彼女の声を聞いたとたん、二人は顔を見合わせて同時に渋い顔をした。
「見つかってしまいましたね」
「どうしたら逃げられると思う?」
「無理だと思いますよ」
麻未の執念深さは見かけ以上だ。
「助けてくれるつもりは?」
一花は首を振った。
「頼むよ」
こんな場面で彼女と関わるのなんて絶対に嫌
「絶対に無理です」
蓮がわざとらしく懇願するような表情をするから、
一花はありえないという表情を返して笑う
「頑張って切り抜けてください」
「なるほど」
蓮の瞳がキラリと光った。
「私はお先に……」
庭へ出ようと一花はテラスの階段へ向かう
「待ってくれ」
普段ならこんな事はしないが緊急措置として認めてもらうしかない
蓮は一花の腕を取った
「すまない、先に謝っておく」
「え?!」
驚く一花の腰を抱き寄せると、テラスの入り口に麻未の姿を確認した瞬間に唇を落とした。
「んっ……」
何が起きてるのか理解出来ない一花の思考は止まり、されるがままとなる。
「れ、れ、れんさん?!」
テラスに入って直ぐ、その光景を見た麻未は驚いて目を白黒させた。
蓮は唇を離すと一花を胸に抱きしめたまま小声で言った。
「このまま動かないで」
呆然とした一花はずうなずくのが精一杯だ。