猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「えっ?なに?どういう事?」

「中盤はね、」

「中盤…えっ、ここで中盤?」

「蓮兄のことかっこいいって笑った後、初花 座り込んで突然泣き出したのよ」

「は?」

いやいや、もう勘弁してよ、昨日の私!

「専属の仕事がクビになるって。でも次に何をしたらいいのかわからないってね、大泣きしてたわよ」

「……大泣き」

穴があったら入りたいとは正にこの事だ。
自分がこんなに酒癖が悪いとは思わなかった。
もうお酒止める!絶対に止める!

……だからどうかお願い、
もうこれ以上は何もしてないって言って。

「だから、初花フリーになるのなら、うちでやらないかなって思ったの」

「へ?」

思いもしない提案に初花は変な声が出た。

「いやいや、ソレイユのモデルは日向でしょう」

「そうなんだけどね……うん、まぁ……」

「ひなでも問題はないのよ、でもね…」

言葉を濁す日向の代わりに紗綾が続ける、

「それをそんな風に着こなされたら、スーパーモデルでも唸るってこと」

「着こなせてますか、私?」

初花はワンピースを見下ろした。

「最初ひなから聞いて半信半疑だったんだけど、実際の姿を見たら不思議ね、あなたの為にデザインしたみたいに見えるわ」

「そんな!嬉しいですけど……」

「でも、ダメ」

日向は大きく首を振った。

「ダメか……」

紗綾さんはおどけるような仕草をしてまた机に向かった。

「ダメ?どうして?」

日向が良いと思ってくれたんじゃないの?
思いもよらないチャンスが巡ってきたと思ったのに。

「本気でやりたいなら、自分でブック持ってここに来て。いつでも歓迎するから。でも今はダメ」

「ちょっと、日向?」

『行くわよ』とさっさと部屋を出ていく日向に初花は慌ててついていった。


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