猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「大丈夫か?」
肩に置かれた手にビクッとして初花は我に返った。
「……はい」
見上げる初花の瞳から大粒の涙が溢れているのを見て、蓮は堪らず抱きしめようとしたが、反射的に避けられてしまう
「私は最低な人間です」
「何を言うんだ!」
涙を流しながら初花は真っ直ぐ蓮の瞳を見つめた。
「初花?」
伸びてきた腕を初花は首を振って拒んだ。
「さっき嘘をつきました」
「嘘?」
「はい。酔っ払って言った事は本心でした。あなたの家族になりたかった」
「なぜ過去形でいう?」
「犯人を見つけてくださりありがとうございます。
これで安心してマンションに帰れます」
「なに?!」
「ちょっと疲れてしまったので、先に休みますね」
「初花っ!」
「蓮さん、私は大くん…彼を…」
「彼が事故に遭ったのは初花のせいじゃない」
「わかってます」
事故は私のせいじゃない
でも私は…あの人のことを……
「今夜は一人にして下さい」
蓮はこのまま初花が離れていくとわかった。
何故だ?
俺と家族になりたいと言ったじゃないか
どうやったら思い出に勝てるんだよ!
「気持ちはわかるが……」
ダメだ、行くな!
「ごめんなさい…、いま私の中には蓮さん以外の人がいます。だから少し時間をください」
「わかった」
蓮は拳を強く握りしめた。
「連絡しますね」
いつか気持ちの整理がついたら……
「待ってる」
初花は立ち上がると瞳をぎゅっと閉じてから蓮を振り返った。
「ありがとうございました」
さようなら……