猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「痛っ」
「辛そうね?」
「はい…すみません……」
月のモノが遅れてくる時はいつもこうだ。
恥ずかしさから否定してみたが、今回はかなり酷い。
「救急車を呼びましょうか?」
まさか!!
首を振ろうとすると目眩がする。
ああ、もう…貧血も……
「言ったでしょ、まだ新米だけど婦人科医だって」
「はい、でも……大丈夫です」
月子さんは私の手首を持ち、脈を測りだした。
「何ヵ月?診たところまだ2ヶ月くらい?
飛行機はダメだと言われなかった?それとも承知の上でわざとなの?」
「えっ」
月子さんは何を言っているの?
久しぶりの日本語だから、矢継ぎ早に浴びせられた質問が上手く理解できないみたいだ。
綾乃は痛みに耐えながら苦笑いした。
「私、」
『いつもの事なんです』と言おうとして、何故か回りの景色がスローモーションのように見えて痛みが一瞬和らいだ。
違う……
嘘よ……
そんな事……
浮かぶ限りの否定の言葉に頭を殴られるような感覚の後、恐ろしい恐怖と同じだけの喜びを全身で受け止めた。
「……気づいてなかったのね」
月子は綾乃の顔を見て状況を理解した。
「たすけ…て…くださ…い」
薄れていく意識の中でアイルランドでの彼との日々を思い綾乃は微笑んだ。
「しっかりして!!救急車を!」
月子は夫に向かって叫んだ。