猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
一花は陽人への悪態をぶつぶつ言いながら歩き始めると、後ろから付いてくる彼の気配を感じて足を止めた。
「まだ何か?」
「いや、俺も散歩してるだけだよ」
「どうしてこんな所で?お仕事はどうしたんですか?」
言いながら一花はまた歩き出した。
「クビになった」
「どうして?」
「仕事が出来ないから追い出されたんだ」
「そうなんですね」
振り返った彼女は俺の瞳をまっすぐ見つめて、次の瞬間大きな瞳に悪戯な輝きをして笑顔になった
「ん?」
「よかったら事務所を紹介します。あなただったらすぐに売れっ子間違いなしですよ」
「事務所?」
「ええ、私こう見えて一応モデルなの」
「どう見えて?十分納得できるけれど?」
「そうですか?背がもう少しあったら良かったのに」
背伸びをしながら一花は苦笑った。
確かに日向に比べて低いと思うが、モデルにしては低い方なのか?
それでも彼女は充分魅力的だと思ったから、蓮はそれを素直に告げた。
「それ以上でもそれ以下でもないところが、君の魅力だろう」
一花は驚いたように大きな瞳をパチパチと二度瞬きをした。
「どうした?」
「そんな風に言ってもらえたのは初めてです。ありがとうございます」
蓮の言った言葉を噛み締めるようにしてはにかむ笑顔の彼女に蓮も自然と笑顔になった。
「どういたしまして。それで?何で事務所を紹介するんだ?」
「あら、俳優になりたいのかと』
「は?」
「だってそんな真顔で演技してるから、いい役者さんになれると思いますよ」
笑う一花につられて蓮も笑ってしまった。