猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「ねだるならもっと可愛い顔でしてくれ」
「ね、ねだってません!これだからちょっと顔がいい男は……」
ブツブツ不満を言う一花を見て蓮は笑いをかみ殺している。
「どうして笑うんですか」
「俺の悪口が褒め言葉に聞こえてね」
「頭おかしいです」
変に飾らず、まして媚びたりしない彼女の表情を見ているだけで蓮は自然と笑いが込み上げて、余計にからかいたくなる。
「ちょっ…離して下さい」
蓮が抱き寄せて顔を近づけると、彼女はつっと横を向いて頬を赤らめた。
「ん?」
「蓮さん……」
蓮はグッと息を飲んだ。
予想に反した期待する甘い呼び掛けは、簡単に理性の箍を外してくれる。
「ここでそれはないだろ」
「んっ…やっ…」
蓮は本気で唇を奪った。
彼女の喘ぐような息づかいが蓮を満たしていく。
キスだけでぞくぞくするのは初めての時以来かも知れない……いや、これはあの時以上だ。
細い身体にしがみつかれると、貪欲な欲望が熱く込み上げてきて蓮はついに我を忘れた。
唇を下げて白いうなじを味わう。
「ダメっ!!」
彼女の叫びと共にポーンと音がして扉が開いた。
一花は力いっぱい彼を突き放すと、首を触りながら睨んだ。
「跡、つけました?」
蓮はハッとして首を振った。
「すまない、これからは気を付けよう」
「これからなんてありません!」
一花は彼から逃げるように背を向けて部屋までの廊下を早足で歩き出した。