猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「納得したか?」
「でも」
「いいから渡せ」
迷っている一花の手から蓮が強引にカードと鍵のついたキーホルダー奪った。
「あっ、開け方は」
説明する前に彼は鍵をそれぞれを見比べると
『ふぅーん』って言ったあと迷いなく差し込んだ。
「嘘……」
一花は絶句した。
鍵は全部で三つある。
メールがきだしてから念のためと事務所の社長が心配して付け替えてくれたもので、面倒だけど順番通りに差さないと解錠できない。
「先に入るぞ」
彼のそれは了解を取る為ではなくて宣言だった。
「待って!私が先に!」
一花は慌てて後を追う。
部屋は1LDK。
玄関を入ると狭い廊下になっていて、左にお風呂とトイレがあって、突き当たりの扉を開けるとキッチンと狭いリビングダイニング、その右に寝室にしている部屋がある。
「どうやら人はいないようだな」
蓮は片っ端から扉を開けてから、彼女を見て振り返ってうなずいた。
一花はホッとしてその場に座り込んだ。
「何かなくなっている物がないか、確かめた方がいい」
一花はのろのろと立ち上がって順番に机の引き出しや、冷蔵庫、箪笥の中を見てみたが別段変わった様子はない。
ドレッサーの前に並んでいるお気に入りの猫たちもみんな無事だ。
最後に右の部屋、寝室を見る為に勇気を振り絞った。
誰もいないのはわかっていても、そこに侵入されたのは間違いのない事実だから。
「全部、無事みたいです」
このベッドでは二度と眠りたくない。
見えない犯人が物色したかもしれないと思うとぞっとする。
あんな写真を送ったりして、一体なにが目的だというの?
「警察に連絡するか?」
一花は首を横に振った。
「今はいいです」
「そうだな、この状況では恐らく指紋なんて残していないだろう」
とりあえず落ち着かなくては
何もないとわかっても、
この部屋が安全だとは限らないのだから