猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

バタン!!と部屋の扉の開く大きな音に、一花は驚いて振り返った。

「どうしたんですか!?」

蓮が飛び込んできて、息を整えながら私を見た。

「なんだ……」

「なんだ?」

「書斎から外を見たら君がバルコニーに立つのが見えて……泣いてるのかと思ったんだ」

「えっ」

心配して走ってきてくれたの?

「いいんだ、俺が勝手に勘違いしただけだ」

彼は扉にもたれ掛かると、前髪を掻き上げながら大きく息をついた。

「心配かけてごめんなさい」

一花は荷物を解いて部屋を一通り見て回り、お風呂までついているここをとても気に入った。

家具はアンティーク調の落ち着いた色で統一されていて、セミダブルのベッドにはハンドメイドのパッチワークがかわいいベッドカバーがかかっている。

特に一花が気に入ったのは、仕事柄衣装持ちだと思っている自分の手持ちの服を全部入れても、まだ余裕のありそうな大きなクローゼット。

ここならば、いくつか広げてディスプレイしてもコーディネートを楽しめる。

明るい気持ちでシャワーを浴びて部屋着にしているロングワンピースに着替えたら、普段とは違う日常が一花を現実に引き戻した。

ここは私の部屋じゃない

持ってきたお気に入りの猫をベッドのサイドボードに置いたり、いつも寝る前にしているヨガのポーズをして寛ごうとしても、気を失う前に見たメールが頭に浮かんでくる。

だから、大丈夫よ
ここは私の部屋じゃないんだから

そう自分に言い聞かせようとすればするほど
余計にメールが頭から離れない

どうやって入ったの?
私の部屋で何がしたかったの?

息苦しくなって、
外の空気を吸おうとバルコニーに出たところだった。

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