猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「大人げない事してごめんなさい。私はどうしてあなたに嫌われてるのかしら?」
「嫌ってませんよ」
「言い方を変えるわ、なぜ避けられてるのかしら?」
避けてなかったとは言わせないわよ、ってバックミラーを軽く睨んで見せると、瞳が合った彼はハハハっと笑って認めた。
「蓮さんに言われているんです。世間に誤解されるような行動をしてあなたに迷惑をかけるなって。一花さんほど有名ではないですが、俺も今ちょっと注目されてるんでお互いお茶の間に暇潰しの話題を提供できるんですよ?」
「えっ!?」
一花が本気で驚くと、今度は車内に響く大きな声で笑い出した。
「本当に俺を知らないんだ!ちょっと傷ついたな……
ってか、歳の差カップルとか夢見た俺が馬鹿でした、
すんません」
せなは一頻り笑って吹っ切れたのか、さっきまでとは違って打ち解けた口調になっている。
「ううん。ごめんね、私の方こそ何にもわかってなかったね」
「悔しいけどまだまだってわかったから、技術だけじゃなくてもっと頑張ります」
「あの……せなくん?」
一花が説明を求めて首をかしげると、彼は運転席で少し背筋を伸ばした。
「俺、先日のジャパンカートレースで優勝したんですよ」
「凄い!おめでとう!」
そのレースがどの位凄いのかわからないけれど、とにかく優勝するのは凄い事よ
「本当に凄いって思ってます?どんなレースかわかってないでしょ?」
一花は窓の外を見るふりをしてしかめ面をした。
「あなた彼に似てるわね」
意地悪なところが。
「ホントに?スゲー嬉しい」
うん、そういうところもそっくり。
「誉めてないわよ」
一花は蓮を思い出しながら、日が落ちて暗くなり始めた街並みの景色が流れていくのをぼんやり眺めた。
「くくっ、蓮さんがあなたを気に入ってるのがわかった気がします」
蓮さんが私を気に入っている?
「そうかしら?」
せなくんはコホンと一つ咳払いして、説明を始めた。