猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

「思い出した、うん!知ってたわ。待って、その優勝って何歳の時の話?」

「15だよ」

そんな歳から優勝してたら将来有望じゃなかったの?

「どうして辞めたのかしら?」

「そりゃ、社長になる為でしょう」

「ああ、そうか」

ご両親の飛行機事故は当時テレビでも大きく報道されていた。

「蓮さんあのまま続けてたら絶対にF 1に乗ってたと思うんだよな」

「そんなに凄かったの?」

「俺は録画された映像でしか見たことないけど、滅茶苦茶かっこいいんだ」

「そうなのね」

彼は夢を途中で諦めたのかな

「ところで星夏君は彼とはどういう関係?従弟?ご親戚?」

「うん。俺は大河内星夏(おおこうちせな)蓮さんのお母さんの実家の方」

「そうなんだ」

納得してうなずくと、星夏君はバックミラー越しにクスッと笑った。

「なに?」

「一花さんは蓮さんとはどういう関係?」

「そ、それは……」

いいよどむ一花に星夏がわざとらしく大きな声を出した。

「こんなに過保護にされてる女の人は美桜ちゃん以外に見たことないんだけど」

美桜ちゃん、
陽人の口から何度も聞いた妹さんの名前

昨日リビングに飾ってあった写真で見た彼女は、目鼻立ちの整った黒髪の清楚な美しい女性だった。

「彼は妹さんがとても大事なのよね?」

麻未の言ったことが気になって、つい聞いてしまった。

「うーん、普通の兄妹だと思うよ?俺にも妹がいるからわかるって言うか……」

星夏は躊躇いがちに言って、バックミラーで一花を見た。

「なに?」

「これ言うのは反則だと思うけど、あなたの事はいつもと違うみたいだから。まあ、蓮さんはあの容姿だし大河内で色々あるから心配だろうけどさ」

大河内?星夏くんのお家で何かあるの?

「いつもと違う?」

「信じて大丈夫だよ、ってこと」

「ん?どういう意味?」

「まんま。蓮さんの事好きなんでしょう?」

「私が?!」

「違うの?!」

びっくりする一花と同じ声量で星夏も驚いた声を出した。

「そんな事は……」

ない!と言えないのはどうしてだろう……

「ふうーん」

「そんな顔しないで」

真っ直ぐ前を見ているけど、星夏がニヤニヤしているのがわかる。

「どんな顔?見えてないくせに」

あーもー!
この子絶対に蓮さんにそっくりよ!

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