猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「おかえりなさいませ」
タキさんに出迎えられて一花はホッとした。
「お疲れのようですね?」
「ええ、まあ……」
星夏君の若さにあてられたなんて口に出したら、自分を老け込ませるだけだ。
「若様は本日は遅くなられるそうです。お食事もどこかの会社の方と会食されるそうですので、気にせず先におやすみくださいとの事です」
「そうですか」
本当に忙しいんだ。
そうよね、ASO の社長さんなんだもの。
考えてみるとすごい人にお世話になっているんだ。
メールのこと直ぐに知らせろって言われたけれど、
何だか言いにくいな……
麻未とやりあったあと、事務所に戻る前に確認したメール。てっきり部屋の事でなにかいってくるかと思ったのに、今日のはいつもと同じだった。
服が似合ってるね、とかオーディション合格おめでとうとか……昨日私が自分のマンションに戻っていないことは気づいていないみたいだ。
「それから掃除がてら、お部屋にお荷物を入れさせて頂きました」
「荷物?」
私宛の荷物がここにきているの?
どうして?
蓮さんが管理人さんに言ったの?
いつ?
「勝手に入って申し訳ありません、元々置かれていた物には手を触れておりませんが、お気に触ったのでしたら謝ります」
黙り込んだ一花が気を悪くしたと思ったタキさんが、神妙な顔で頭を下げようとするので慌てて止めた。
「まさか!やめてください、タキさんの事は信頼しています!お掃除ありがとうございました」
それよりも荷物って何のこと?
タキさんにお礼を言って部屋に戻った一花は、その荷物の正体を確認すると激しい怒りが込み上げてきた。
こんな事、頼んでない!
これでは麻未に何を言われても言い返せない!
「話しをしなくてはいけないわ」
彼の帰りが何時になろうと、星夏くんの事といい、
今日起きたこと全部、絶対に今日中に話し合う必要がある。