猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
本当の気持ち
蓮は疲れて玄関に立つと自分で開ける前に扉が開いて驚いた。
「おかえりなさい」
まさか彼女に出迎えられるとは思ってもいなかった。
「ただいま」
昨夜のようなゆったりとした部屋着ではなく、ボタンを上まできっちり留めた薄いピンクのシャツにデニムのパンツ姿の彼女は腰に手を当てている。
どうやら温かい出迎えではないようだ。
そんな推測をせずとも顔を見ればわかるか。
まったく……
彼女は不機嫌な顔を隠そうともしていない。
俺が魅力的だと言ったからだろうか?
まさか、な。
「へらへら笑ってないで早く中に入ってください」
蓮は笑いながら首を振った。
さっきまで頭の堅い連中を相手に難しい顔をしていたはずなのに、へらへら笑ってると叱られるとは。
「遅くまで起きていると肌によくないんじゃないか?
何かあったのか?」
「私のお肌の心配をする前に、ご自分の身体の心配をした方がいいと思います」
言葉とは裏腹につんけんしながら、彼女はリビングへ入っていった。
蓮がついていくと、ローテーブルの上にティーセットとソファーの上に読みかけの雑誌が広げられていた。
俺の帰りを待ってたのか?
「何を怒っているんだ?」
「怒ってません!」
「怒っているだろうが」
華奢な手首を掴んで引き寄せる。
「離してください!」
嫌そうに振りほどかれて流石にイラッとする。
「俺は何をした?」
「勝手な事ばかりです!!星夏君に迎えに来させたり、クローゼットを服や靴で一杯にしたり」
「星夏と何かあったのか?」
「何もないです!」
「いったい何なんだ?!用意させた服が気に入らないのなら、明日取り替えるように言っておく」
「そうじゃなくて!!服は自分で買えるって何度言えばわかるんですか!これでは麻未に言われた事を否定できないです!」
「麻未?!三条麻未か?!」
蓮はびっくりして一花をまじまじと見た。