猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆
「なるほど。それで君は美桜のことを気にしていたんだな」
彼の顔がなんだか楽しそうだ。
「美桜は君を気に入ると思うよ」
あれ?話の方向がズレてきてる?
「私は別に……どうせ飽きた女性を断る理由に妹さんを使っていたんでしょう?」
何となくだけどカラクリが見えた。
兄も昔、自分を使って女の子から逃げていたことがあったから。
「兄って人はまったく!」
その尖った声に蓮はムッとした。
「どういう風に解釈したのか知らないが、俺は不誠実な事をしたつもりはない」
「私に言い訳しなくていいです。元々レーサーなんて華やかな世界にいた人なんですもの、想像できます」
「俺の過去の何を想像できる?」
「女性をとっかえひっかえ?」
「関係が長続きしないのは、何も俺だけのせいじゃない。みんな俺の中身に興味がないのだから仕方ないだろ。俺はアクセサリーやブランドバッグと一緒なんだよ」
「そんなことは……」
「あるさ!その証拠に付き合いだすと必ず何人も友達に会わされて、散々付き合わされた挙げ句に仕事が立て込むと、物でなだめさせられ、最後は仕事と私のどちらが大事なのか?と責められる」
蓮は吐き捨てる様に言って顔をしかめた。
「世の中そんな女性ばかりじゃないです」
それは蓮さんの見る目がないのだと、一花は思いたかった。
でも彼のような人を自慢したくなるのも、逆に彼のような人だからこそ不安になってしまうだろうお相手の女性の気持ちもわかる。
「くだらない事に振り回されるのはもううんざりだ」
彼の瞳にあの悲しい色が見えて、胸がまたチクリとした。
一花が腰に回されていた彼の手に自分の手を慰めるように重ねると、彼が小さく微笑んだ。
「初めて会ったあの夜、君は俺に言っただろ?
心の瞳で見ればわかると。君の心の瞳でみた俺はどう見える?とっかえひっかえするような軽薄な男か?」
「それは……」
一花は瞳を閉じた。