猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

罪深いほどハンサムな顔に細身に見えるけれど、実際こうして抱かれるとわかる厚い胸板や硬い筋肉の腕。

肩書きは申し分なく、スーツの着こなしも完璧
そんな外側の彼に惹かれないはずがない。

じゃあ内側は?
俺様で意地悪だけど、周りの人達に誠実で少しひねくれているけど家族を大事に思っていて、疲れていてもこうして私の話を聞いてくれる。

あの麻未の本性だってちゃんと見抜いている。

これまでの女性関係がどうであろうと、護ると言ってくれた彼の言葉を私は信じている。

軽薄なんかじゃない。

一花は瞳を開けて首を振った。

「そんな人じゃないです」

ホッと息をついてから、彼の顔が喜びで輝いた。

それを見て一花も笑顔になった。

ふと、今日星夏君に言われたことを思い出す。

『蓮さんのこと好きなんでしょう?』

私は……
沸き上がる期待と不安が同時に心をいっぱいにした。

「どうした?」

好意に甘えた結果ここにいるだけ。

蓮さんも運命なんて言ってどこか恋愛ゲームのように始めたばかりの関係を楽しんでいるだけで、きっとまだ本気じゃないはず……

「どうして私を助けようと思ったんですか?」

つい口から飛び出した言葉をすぐに後悔した。

バカ!それは私をどう思っているのか?と聞いてるのと同じじゃない!

「それは、」

それは?と彼の顔を見てハッと息を飲む。
からかいの色が消えて真剣な瞳になっている。

「やっぱり言わなくていいです!」

聞きたいのに聞きたくない。

狼狽えて膝から降りようとすると、逆に向き合う体勢にされてしまった。

「一花」

ドキンと大きく心臓が跳ねた。

「それは、君のことが好きだからだ」

甘い痛みが一花の全身を貫いた。

「ま、待ってください……」

近づいてきた唇に手を当てて拒むと、手のひらで彼の唇が弧を描いた。

「あの……」

甘い瞳が優しく笑っている。

どうしよう……

甘くて切ない気持ちにぎゅっと胸を掴まれて、自然と瞳に涙が滲んできた。

「わ…たしは……」

私の手を外した唇が目尻の涙を掬った。

「俺の中身を信じて」

そう言いながら彼の唇が頬に降りて、一度確かめるように瞳を合わせてから唇に重なった。

これまでの強引なキスと違い、彼は優しく押すようにして私から反応を返すように待っている。

頭の中がぐちゃぐちゃだ。

私はこんなに整った顔の人は苦手なのに

社長さんだとかお金持ちとか、
ステイタスにも興味はないんだから。

けれど、それは見た目、外側の蓮さんで……

心の瞳で見た彼は…………

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