猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

「ところで、ねえ?アタシ変な噂を聞いたのよ」

マッキーが気まずそうな顔で一花を見た。

「なに?私のこと?」

「うん……一花ちゃん、モデル辞めるの?」

「え?!先輩、本当ですか?」

「まさか!!」

慌てて否定してから、先日の美樹さんの言葉が頭によみがえった。

『今の雑誌にはあと一年がいいところ……』

もしかして、本当に専属クビなのかしら?
だから、そんな噂が?

「そうよねーアタシも否定したんだけど」

「誰がそんな事言ってるんですか?!先輩が引退なんて早すぎますよ」

ジェニーもマッキーもそう笑ってくれたけど、一花の心には不安が根付いてしまった。

だから美樹さんはあんなに熱心にテレビの仕事を薦めてくるの?

本当に仕事がなくなったらどうしよう

「…ぱい……先輩ってば!」

どれくらい考え込んでいたのか、顔を上げると支度の出来たジェニーが心配そうに私を見ていた。

「あ、ごめん」

「先に行きますね」

「うん」

ジェニーが出ていってすぐ、マッキーが私にケープをかけた。

「大丈夫?顔色が悪いわよ?」

「マッキー私もう潮時なのかな……」

マッキーは一花がモデルを始めたのと同じ頃にヘアメイクの仕事を始めたので、お互いをこの世界の同期のように思っている。

ライバル意識や魑魅魍魎の渦巻くこの業界で、唯一気心が知れた友人。

一花は彼…、彼女を信頼している。





< 87 / 159 >

この作品をシェア

pagetop