猫と宝石トリロジー ②エメラルドの絆

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あいつは誰だ?

ウェイティングバーに現れた優男に見せた彼女の顔を見て、男はショックで息が止まりそうになった。

待てよ、
あいつは前にも見かけた事がある。

ふしだらな金持ちだ。

ああ、そうだ。
あいつの噂は聞いている。

以前、彼女はあいつを拒否していなかっただろうか?

それがなぜ?

男の頭の中で本のページが捲られた。

ー『悪魔が本当に欲しかったのはお姫様でした』

男は深呼吸をして頭の中の声に耳を傾けた。

ー『王子に化けた悪魔は上手く周りをだましてお姫様に近づきました』

そうか!お母さん、
僕と彼女の物語がついに動き出したんだね。

いつだって邪魔者や悪者はいる。

だからこそ、ヒーローがいるのだ。

それが物語というものだ。

ー『何でも簡単にはいかないのよ、それが愛ならば忍耐強く待つの』

お母さんはいつもそう言って僕を戒めた。


男は納得して拳を緩めるが、それでも奴の手が彼女に触れるのを見ると冷静ではいられなかった。

正しい行いをしなければならない。

物語は始まっている……順序だ。
そう、今日罰を受けるべき人間は他にいる。


男は速やかに行動を起こした。


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