Witch and Vampire ―恋物語―
「ナイトさん、どうしたんだ?」
「いや、何でもない。」
俺は紙をさりげなくポケットに入れた。
「ところで、買い物はもういいのか?」
「あぁ。おかげでおいしいパン屋さんも見つけたんだ。」
確かに、ソラの口元にはチョコレートがついていた。
俺は笑いながらソラの口元を拭ってやる。
すると、ソラは恥ずかしそうにうつむいた。
「じゃあ、写真を撮りに行こうか。」
「シャシン?」
「行けばわかる。」
俺はいつも行っている写真屋へと向かった。
チリン
「いらっしゃい。おぉ。あんたかい。」
椅子に座っていたじいさんが、つけていたメガネをはずしながら言う。
「そちらのお嬢さんは婚約者かなんかかい?」
「ち、違う。今うちで預かっているだけだ。」
ソラが俺のことを軽く見た後言った。
「ソラだ。」
「へぇ。綺麗な髪をしてるね。」
にへっと笑うじいさん。
口だけは達者だ。
「わしゃダダンっちゅうおいぼれのカメラマンだよ。」
けっけっと笑うじいさん。
「いつものやつでいいんだよな?」
「あぁ。いつもありがとう。」
「いいってもんよ。今じゃこんなとこに写真を撮りに来るやつなんかいないからね。」
「って言いながら、何年経ってんだ。」
なんだかんだでこのじいさんの腕は大したものなのだ。
お祝いの時期になると長蛇の列になることもある。