レース越しの抱擁
カーテンの裏で啜り泣くイヴを見ながら、キラは目頭を押さえる。これまでの自分の過ちを悔いた。彼女によって気付かされた、時間の大切さ。
キラは、イヴを大切にしてきたつもりだった。しかし、イヴの笑顔の裏に隠された葛藤に、気付かなかった。自分を笑顔で見送るイヴに、頼りすぎたのだ。
「イヴ、」
「…っ…」
「誕生日、おめでとう。」
「お、そいわよ…バカ…!」
キラは、カーテン越しにギュッとイヴを抱き締める。
“カチリ”と時計の針が23時を指した。
「まだ、イルミネーションやってると思うか?」
「やってると思うけど…行くの?私はイヤよ。寒いわ。雪も降ってるし…」
「ダメだ。今から行くぞ。今年の思い出、欲しいだろ?」
降り頻る雪を見ながら呟くイヴにキラは微笑する。それにほんのり赤く頬を染めたイヴだったが、照れ臭くてソッポを向く。
「…何よ。急に偉そうに。婚約者の事より、仕事の事しか頭に無い癖してイルミネーションですって?一人で行って来たらどう?」
「俺はイヴと行きたいんだ。」
「…っ」
「今までの時間を埋めていきたい。」
「…〜っもう!寒いから外に出るのは少しの間だけよ!?」
「フッ。了解。」
顔を真っ赤にさせて折れたイヴ。