レース越しの抱擁





カーテンに包まり、モゾモゾ動くイヴ。覆い被さるようにイヴを抱き締めるキラは、耳元で話す。


吐息が掠めるくらい近く、まるで囁かれている感覚に陥り、イヴは身を捩る。



「merry X'mas イヴ」



時間は物では埋められないことに気付いた所以は彼女の涙。


時間は金で買えない。そんなことはとうに知っている。だから金で物を買い、物で時間を埋めていた。何度も彼女との約束を破っては物で埋めていた。いつの間にかそれが当たり前のようになり、約束を破る事すら平然となっていた。


イヴとの時間は幾らでもある、そうは高を括っていたが、今日しか来ないこと一日もあることをキラは目の当たりにした。



「merry X'mas キラ」



イヴはカーテンとキラの温もりを二重に感じつつ目を閉じる。同時にソッと重なる唇。真夜中のキスは、涙のせいでしょっぱかった。


そして実はロングドレスのサンタさんがカーテンの内側に潜んでいた。イルミネーションのことなど忘れ、キラが狼と化すまで後五分。


25歳の誕生日は、波瀾のX'mas。降り注ぐ雪は止むことを知らず、閑静な住宅街を白く染めた。



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