いとしのトナカイくん
誰かに、頭を撫でてもらうなんて。

一体、いつぶりのことだろう。



「……ありがと、トナカイ」



その笑顔のまま、トナカイの顔を見上げてそう言った。

トナカイは一瞬の間の後、こくりと首を上下させて頷く。

どうやら、あたしの気持ちは伝わったらしい。


あたしは「よし!」と気合いを入れて、体重を乗せていたガードレールから立ち上がった。



「パパッとこれ配って、ササッとお店に戻っちゃいますか!」



手にしたカゴを掲げるあたしに、トナカイはまた頷いてみせる。

それを見つつ、あたしはふと、あることを思い立った。



「あ、そうだトナカイ、これ」



言いながらあたしは自分の首に巻いていた赤いマフラーを取ると、ふわりとその首にかけてやる。

顔をこちらに向けたトナカイに、わたしはまた笑いかけた。



「貸したげる、それ。さっきガキんちょにも狙われてたし、そこ隙間風寒いでしょ」

「………」



トナカイはやはり無言だけれど、自分の首のマフラーを指さしてから、今度はあたしの首元を指してみせる。

彼の言わんとしていることに思い当たって、あたしはひらひらと片手を振った。
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