いとしのトナカイくん
「……ちょっと、おねーさんってば」

「へっ??」



ようやく自分へ掛けられている声に気付いて、あたしはパッと後ろを振り向いた。

見るとそこには、自分より少し年上であろう、男の人ふたり組。

もうすでにアルコールが入っているのか、ふたりとも少しだけ浮ついた瞳で、あたしのことを見つめていた。



「……なんでしょーか」

「俺ら、ティッシュ欲しいんだよねー。くれない?」



ニヤニヤといやらしく笑うその人たちに若干不快な気分になりながらも、あくまでそれは顔に出さず対応する。

そうしてカゴからティッシュをふたつ取り出し、まとめて差し出すと──がしりと、そのまま手首を掴まれた。



「ちょっ、」

「かーわいーい、ミニスカサンタ。今夜俺らのところにも、来てもらっちゃおうかなー」

「ッ、」



寒さのせいじゃない理由で、ぞぞっと鳥肌がたつ。

にやけ面のふたり組は、あろうことか手首を拘束したうえで、あたしの腰にまで手をまわしてきた。


──やだ。気持ち悪い、気持ち悪い。

そうは思うのに、突然のことに動揺して、思うように体が動かない。

声も、出ない。



「……ッ、」



……助けて、誰か。

だれ、か──。
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