いとしのトナカイくん
「ふ、ふふっ。あなたその角、自分で引っこ抜いたの?」
「………」
「ふふふっ。店長に、怒られるよ?」
体は人間なのに、頭はトナカイで。
しかもその印象的な角は、片方しかなくて。
そばを通る人たちが、ドン引きした顔でこちらを見て、足早に通り過ぎていく。
だけどもあたしは、そんな視線たちも気にならず。
ぎゅっと、つながった手に力を込めて。まっすぐに、彼を見上げる。
「でも、さっきのトナカイ、すごくかっこよかった。……ありがとう」
ほっとしたのと可笑しいのとで泣き笑いのような表情になりながらも、あたしは精一杯気持ちを込めて、そう言った。
ピクリと一瞬震えたトナカイは自由な右手を、おそるおそる、ためらいがちに、あたしの頭に乗せる。
その、心地よい感覚に身を委ねながら。ハッとして、閉じかけていたまぶたを開けた。
「そうだトナカイ、体はっ?!」
「………」
あたしの頭の上から手をどけて、おもむろに彼が指をさす。
その指が示す方向に目を向けてみると、横断歩道の向こう側の信号の下に、茶色い布のかたまりが見えた。
近くを通る人たちが、ギョッとしたように二度見しているのが確認できる。
「………」
「ふふふっ。店長に、怒られるよ?」
体は人間なのに、頭はトナカイで。
しかもその印象的な角は、片方しかなくて。
そばを通る人たちが、ドン引きした顔でこちらを見て、足早に通り過ぎていく。
だけどもあたしは、そんな視線たちも気にならず。
ぎゅっと、つながった手に力を込めて。まっすぐに、彼を見上げる。
「でも、さっきのトナカイ、すごくかっこよかった。……ありがとう」
ほっとしたのと可笑しいのとで泣き笑いのような表情になりながらも、あたしは精一杯気持ちを込めて、そう言った。
ピクリと一瞬震えたトナカイは自由な右手を、おそるおそる、ためらいがちに、あたしの頭に乗せる。
その、心地よい感覚に身を委ねながら。ハッとして、閉じかけていたまぶたを開けた。
「そうだトナカイ、体はっ?!」
「………」
あたしの頭の上から手をどけて、おもむろに彼が指をさす。
その指が示す方向に目を向けてみると、横断歩道の向こう側の信号の下に、茶色い布のかたまりが見えた。
近くを通る人たちが、ギョッとしたように二度見しているのが確認できる。