いとしのトナカイくん
「え、ちょ……」



そうしてトナカイは、なんだか奇妙なポーズをとった。

直立で、右手はまっすぐ上に、左手は胸のあたりから、斜め下に突き出すように。

……えーっと、えーっと、もしかしてもしかしなくても、これって……。



「なに、人文字?」



こくり、トナカイがまた頷く。

思わず脱力しながら、あたしはそんな彼を見上げた。


……そんなんやらなくても、ただひとこと、しゃべればいいのに……。

だけどまあ、なんか事情でもあるのかな。とりあえず今は、人文字の解読をするのが最優先か。

そう考え、あたしはじっと、トナカイに視線を向ける。

えーっと、えーっと、このカタチは……。



「……『ト』?」

「………」



やはり言葉は発さないも、彼はこちらを見たまま頷いた。

どうやら正解だったらしく、引き続き、別のポーズをとる。

今度は、両手を横に伸ばして……。



「……十? あ、違う?」



ふるふると首を横に振ったトナカイを見て、あたしは改めて考える。

……さっきがカタカナだったから、今のもカタカナ?



「えっと、『ナ』?」



こくんと、今度はトナカイが頷く。

そんな調子で、続けていって……。
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