いとしのトナカイくん
「………」



さてどうするのかなと、トナカイの様子を観察していると。

意外にも彼はその場にしゃがみこんで、ふたりのキッズの頭をぐりぐりと撫で回した。


……へー。子ども、好きなんだ。

きゃっきゃとよろこぶ男の子たちに、なんだか少しだけ、笑みがもれる。

だけども、そこはやんちゃな小学生。すぐにその子たちは、不穏な動きをし始めた。



「なにこれ、どーなってんの? チャック後ろ?」

「あっ、ここからちょっと首見えんじゃん!!」



ふたりはがっつりトナカイにしがみついて、その着ぐるみを観察している。

あろうことか頭と胴体部分の間に手を入れようとしていることに気が付いて、あたしは慌てて話し掛けた。



「コ~ラ~僕たちー? トナカイさん痛いから、ちょっと離れてあげようね?」



中腰になりながらにこにこ笑顔でそう言ったあたしに、キッズは不満げな表情。



「うっせーニセサンタ!! プレゼントもくれねぇくせにえばんなよ!!」

「だまってティッシュ配ってろよ、おばさん!!」

「お……っ!?」



お、おばさんですってえええええ!!??

一応まだ、大学1年生ですが!! ギリギリ10代の19歳ですが!!

着ぐるみのトナカイは許されるのに、ミニスカサンタは全否定ですかコノヤロー!!
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