【短編】HONEY DROP
「別にって……素直じゃないなぁ」

「ちょ、陽子っ」

陽子は今度、私の頬をプニプニと人差し指で押す。
「頬っぺた柔らかいなぁ」と呑気に言う陽子に、私は尚更、顔が赤くなった。


「おっ、麻美いいの持ってるじゃん。ちょうど俺、甘いの食べたかったんだよねー」

頭上から声と共に腕が伸ばされ、私の手の中にあったハチミツ飴が取られる。
私は一瞬目を見開き、ばっと振り返った。

「……ちょっと健吾っ。返してよ!」

「えー、何? こんな飴、そんなに大事なわけ?」

こんなって……。
周りがたかが飴一つと言っても、私にとっては大事なものなのだ。
自分よりはるかに背が高い健吾を、睨んだ。

「やめときなさいよ、健吾。それ、麻美にとっては本当に大事なものだから」

陽子が健吾にハッキリ言い放った。
……陽子、大事なものだってわかってくれるみたい。

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