【短編】HONEY DROP
「そんなに? 誰かに貰ったの?」
「そうよ。だから、さっさと返してあげなさい」
口を尖らせて拗ねたように言う健吾に、陽子は私の代わりに答えてくれる。
そっと、手にハチミツ飴が返された。
…良かった。
ほっと安心して、両手でそれを握った。
…さすが、健吾の彼女。
健吾は自分の彼女には、敵わないみたいた。
「なんだよ、それ。麻美って、好きな人とかいるの?」
首を傾げながら聞いてきた健吾に私は、さっき落ち着いた筈なのに顔が熱くなるのを感じた。
「べ、別にっ」
“好きな人”……その言葉が出ると、“あの人”の顔が頭の中で浮かぶ。
健吾は知りたい、知りたいと好奇心丸出しの顔で私を見てくる。
うっ……。
「わ、私、帰るっ!」
居てもいられなくなった私は、鞄を慌てて取り教室から抜け出した。
走りながら、顔の熱を冷まそうと考える。
好きな人って……。
わかってる。
“あの人”のこと、私は好きだって。
本当はわかってるけど。
前に……進めてないだけ。
.
「そうよ。だから、さっさと返してあげなさい」
口を尖らせて拗ねたように言う健吾に、陽子は私の代わりに答えてくれる。
そっと、手にハチミツ飴が返された。
…良かった。
ほっと安心して、両手でそれを握った。
…さすが、健吾の彼女。
健吾は自分の彼女には、敵わないみたいた。
「なんだよ、それ。麻美って、好きな人とかいるの?」
首を傾げながら聞いてきた健吾に私は、さっき落ち着いた筈なのに顔が熱くなるのを感じた。
「べ、別にっ」
“好きな人”……その言葉が出ると、“あの人”の顔が頭の中で浮かぶ。
健吾は知りたい、知りたいと好奇心丸出しの顔で私を見てくる。
うっ……。
「わ、私、帰るっ!」
居てもいられなくなった私は、鞄を慌てて取り教室から抜け出した。
走りながら、顔の熱を冷まそうと考える。
好きな人って……。
わかってる。
“あの人”のこと、私は好きだって。
本当はわかってるけど。
前に……進めてないだけ。
.