【短編】HONEY DROP
私はまた、その手に視線を戻すと。
そこには、一つのハチミツ飴。
意味がわからず、再度先輩を見上げた。
先輩は微笑んだまま言った。

『この飴で、癒されてよ。話は全部……俺が聞いてやるからさ』

大きな手で、頭を撫でられた。
それは別に、嫌な気はしなくて。
なぜか逆に…心地良かった。
だから私は、全てを話した。
先輩は嫌がらずに黙ったまま、ただただ聞いてくれて。

『大丈夫だよ。……いつか君にも、君を幸せにしてくれる人が現れる』

ハチミツ飴、そして優しい言葉でなぐさめてくれた。
私はその優しさが嬉しくて、涙をポロポロと零した。
そしてそれ以来、先輩と会うたびに私は徐々に惹かれていったんだ―――。



「先輩は本当に、甘いものが好きですね」

「うん。見た目がこれだからさ、ギャップが激しいみたい」

先輩は自分を指しながら、苦笑して言う。
私はハチミツ飴を見ながら、クスッと笑った。
そういう所では、子供っぽいのかな……。

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