甘い恋の始め方
「帰りましょう。道路が混む前に」

ほとんどの場所を見て回ったふたりは再び車に乗り込んだ。

途中、カフェで一休みしてから、来た道を戻る。

都内に入ったのは18時を過ぎていた。

「お疲れ様です。土曜日だから道路、混んでましたね。あの、疲れていないですか?」

理子がねぎらいの言葉をかけると、悠也は笑って「疲れていないです」と言った。

「車を置いて青山辺りで食事をしましょう」

「……はい」

車は大きなマンションの地下に停められた。

「ここは……?」

車から降りて理子は聞いてみる。

「俺の住んでいるマンションです。シャチは残念ながら連れて行けないので、置いていきましょう」

後部座席のひとり分を占めているシャチは車の中でお留守番だ。

車から降りてすぐ近くのエレベータに乗り1階で降りる。

少し歩くと青山通りに出た。

立地の良いマンションだから家賃が高いだろうと理子は歩きながら考える。

「なにが食べたいですか? なんでもいいですよ。食べたいものを言ってください」

「ピザが食べたいです」

「ピザか。いいですね。この近くにうまい店がありますよ」

悠也は理子を石釜のあるピザ屋に連れて行った。

< 102 / 257 >

この作品をシェア

pagetop