甘い恋の始め方
イタリアワインと焼きたてのチーズがとろり溶けたピザが運ばれてきた。

悠也がマルゲリータピザの一切れを皿の上に置き、理子に渡してくれる。

有名な店らしく満席に近い。

シーワールドの話をしていたところへ、不意にテーブルに影が落ちた。

「悠也、上海じゃなかったのか?」

声をかけたのは篠原だった。急遽入った会議を知らないようだ。

「週末は俺の時間ですよね?」

「それはそうだ。で、女性とデートか」

理子はテーブルの横に立っている男性を見て、息が止まるくらい驚いた。

(社長っ!)

やはり社長とは深く知るほど面識はないが、何度か会議で一緒になったことがある。

(まさか覚えられていないわよね……?)

「彼女は小石川理子さんです。理子さん、彼はわが社の社長の篠原です」

悠也に紹介され、理子は気まずい思いでその場に立ち上がり頭を下げる。

「はじめまして。小石川です」

「篠原です」

篠原は軽く笑みを浮かべ挨拶を済ませると、友人が待っているテーブルへ行った。

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