甘い恋の始め方
立ち上がると足元がふらつき、理子は悠也に支えられて店を出た。

酔って火照った頬に冷たい空気が心地いい。

「大丈夫ですか?」

「は……い、だいじょうぶ……です」

口ではそういうものの、悠也に手を添えられていなければまともに歩けない状態だ。

「すみません。飲ませすぎました」

「悠也さんは……強いんですね?」

「そんなことはないですよ。気分は悪くないですか?」

「いいえ。このままふわふわ……浮いてしまい……そうです」

理子が意識を保っていられたのはそこまでで、悠也の腕の中で眠りに落ちた。

******

ふいに理子は重いまぶたを開けた。

明るさを抑えたオレンジ色のフロアライトに包まれた部屋の中。

大きなベッドにいるのは理子ひとりで、部屋を見回しながらゆっくり起き上がる。

(今何時……?)

壁に掛けられている時計がぼんやりと見える。

12時前だった。ピザの店を出てからそれほど時間が経っていない。

「ここはどこ?」

(ホテルではないみたい。本棚に本がびっしりある。ここは悠也さんの部屋?)
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