甘い恋の始め方
「ああ、材料がないんです。出張で買い出しに行ってないので」

リビングの横のアイランド式キッチンに向かう理子は足を止めた。

「そうでした。今日、戻られるんですものね」

「外へ食べに行きましょう」

悠也は書類を書類ケースに戻して立ち上がった。

「お仕事していらしたんですね。もしかしてお忙しいんじゃないんですか?」

「あとは機内で出来ることです。理子さんが気にしなくても大丈夫ですよ」

悠也の手が理子の背中に回り、玄関へ促す。

理子は寝室とリビングしか見ていないが、他にもドアがあることからこの部屋が広いと推測した。

独身男性には広すぎる作りだ。

マンションを出てぶらぶらと歩くと、トリコロール柄のひさしのあるカフェにたどり着く。

「フランス風の朝食がなかなかなんです」

洗練された建物が建ち並ぶ一角のおしゃれな店だ。

小さな庭があり、寒くなければ外で食べるのも気持ちが良さそうなカフェ。

ウエイトレスに案内されたのは窓際のテーブル。

席に着くと理子は店内に視線を向ける。

店内もフランスにちなんだ小物やカラーで素敵だ。

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