甘い恋の始め方
大きなカフェオレボウルとクロワッサンが運ばれてきた。

それだけで十分お腹がいっぱいになりそうだが、悠也はスクランブルエッグとカリカリのベーコンを頼んでいた。

「お腹が空いたでしょう? たくさん食べてください」

「おいしそうですね。いただきます」

理子はクロワッサンをちぎるとカフェオレにつけてから口にした。

「食事が終わったら送っていきます」

「大丈夫です。ひとりで帰れます」

(そうだった……お昼過ぎの便で上海へ戻るんだった……)

腕時計を見ると、10時近い。

「いいえ。14時30分発の便にしたので、まだ時間があります」

「でも……」

やっぱり遠慮がちになってしまう。

「わからない人ですね。はっきり言いましょう。理子さんとまだ別れたくないんですよ」

(まだ私と別れたくない……?)

想像もしていなくて、ポカンと口を開けたまま言葉が出ずに悠也を見つめる。

「そんなに見つめないでください。恥ずかしくなるじゃないですか」

悠也の気持ちがわかり、理子は嬉しくなった。



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