甘い恋の始め方
「ワイン、残ってももったいないので飲んでくださいね」

「浩太君も飲んで――」

「俺はこれから理子さんの髪を弄らせてもらうから、酔っぱらえないですよ」

浩太は理子のワイングラスにワインを注ぎ足す。

少し経って浩太が動き始めた。

「髪も洗わせてくださいね」

「えっ……」

「そうしないと仕上がり、保証できませんよ」

そんなことはないのだろうが、理子は仕方なくシャンプー席に向かった。

髪を美容師に洗われるのは毎回のことだが、顔をまるっきり見せ無防備になってしまう。

それが浩太だと恥ずかしい。

「手早くね」

早く洗ってもらおうと言うと、浩太が「はいはい」とめんどくさそうに返事をした。

手早くと言ったのだが、浩太の考えているメニューがあるようで、髪を優しく洗ったあと、ヘッドスパで地肌をさっぱりと、髪を艶やかにしてくれる。

昔からなのだが、髪を弄られていると眠くなる。

ましてや赤ワインを数杯飲んでいるせいで、目蓋がくっつきそうだ。

「終わりましたよ」

髪を丁寧に拭かれ、タオルで頭を覆われると施術席へ移動させられる。

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