甘い恋の始め方
先日彼が言っていた前髪を切り、少し重たいイメージのあった髪はレイヤーを入れ軽くしてもらう。

ハサミさばきが目の前の大きな鏡を通して、カッコよく見える。

(そういえば、施術しているときの翔もカッコよかったっけ)

「じゃあブローしますね」

浩太は大きなドライヤーとブラシを持ち、理子の頭部にあてはじめた。

温かい空気と、丁寧なブロー。

「大人可愛くしますからね」

「ありがとう。でも、これから帰って寝るだけだから乾かすだけでいいよ?」

「またそんなことを言う。最後までちゃんとやらせてください」

心地よさとワインのせいで理子の目蓋が意思に反して閉じる。

少ししてドライヤーの音がしないことに気づき、ハッと目を開ける。

開いた目に飛び込んできたのは浩太の顔。

今にも唇と唇が触れそうなほど近い。

「ちょ、ちょっと待って!」

理子は両手を浩太の顔に当ててブロックする。

ブロックすると、理子の手の甲に浩太の唇が当たった。

「なんだ、起きちゃったのか。残念。理子さんとキスしたかったな」

浩太は身体を起こし、残念そうに苦笑いを浮かべる。

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