甘い恋の始め方
「り、理子なのか?」

理子を面と向かって見た翔が素っ頓狂な声をあげる。

「そうよ。久しぶりね」

「浩太、いつの間に俺の女と付き合っていたんだよ!?」

思いがけない展開に翔の声が上ずって聞こえる。

「俺の女扱いしないでよね。単なる元カノでしょ? 浩太君、失礼するわね。髪、ありがと」

「お、おい、ちょっと待てよ!」

ここでゆっくり翔と話なんかしたくない理子は無視するが、翔の横を通り過ぎるとき、手首が掴まれた。

「放してよ!」

乱暴に振りほどきキッと睨みつけた理子に翔は唖然となる。

そんな翔を尻目に理子は「ミューズ」をあとにした。

2年ぶりに会った翔はさえない男に見えてしまった。

いや、美容師だけに容姿に気を使って服装もおしゃれではあるけれど、悠也と比べるとつまらない男に見えた。

(2年前は大好きだったのにな……そんな風に思えるのは、もう吹っ切れたってことよね)

自宅に戻ると、理子は真っ先にベッドの上に身体を投げ出した。

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