甘い恋の始め方
3人はエレベーターに乗り込み会議室へ向かった。

会議室にはシステムエンジニアやネットワークエンジニアなど、わが社の中枢ともいえる人材が8人ほど集まっていた。

長テーブルを四角く合わせ皆は座っているのだが、ドア近くの2席だけは誰も座っていない。

山本課長はプロジェクトリーダーの堂山(どうやま)部長代理の隣に座り、理子と設楽は離れた席に腰を下ろしたところで会議が始まった。

デザイン担当の理子と設楽がほとんどわからない専門用語を使った会話が飛び交う。

理子はファイルを開き、発注元の資料を見る。

発注元は上海でも人気のある服ブランドや小物、化粧品などの製造・販売する企業。

海外ブランドに興味がない理子にはまったくわからない。

(服のカタログでデザインを閃かせなければ)

そのときドアがノックされた。

ドアの近くにいた男性が立ちあがり、誰かを部屋へ招いている。

理子はカタログから目を離し顔を上げた。

入ってきたふたりは空いている席に座ったところで、そのうちの1人を見て理子はぎくっと身体がこわばり固まった。

理子が今まで見ていたファイルがバサッと床に落ちる。

その音で席に着いた男性の視線が理子へと動く。

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