甘い恋の始め方
「体調が悪いですか?」

小声で設楽に言われてハッと彼を見る。

「えっ?」

「顔色が悪いですよ」

気遣う設楽に理子はそっと弱々しい笑みになる。

「大丈夫です」

本当のところ、ここから一刻も早く出て行きたい。しかし、今は抜けられないし、彼の横を通り過ぎる勇気がない。

神経質になった理子はその後も何度か勇気を出して悠也の顔を見てみたが、目が合うことはなかった。



会議が終わったのは14時だった。昼食時間を大幅に過ぎている。

ぞろぞろと社員たちがドアから出て行く。

一番先に会議室を出たのは悠也だった。悠也と一緒に入ってきた男性も後ろから付いていく。

ドアから一番遠くの席にいた理子はみんなが出て行ったあとゆっくり出た。

廊下に悠也がいないことを祈って。

すぐにでも話をしたいが、悠也が理子の言い訳を聞きたいのかはわからない。

視線を合わせずに出て行ったのは、今は理子と話をしたくないからだろう。

理子はどうして先週話しておかなかったのだろうと、後悔しながら会議室のドアを閉めた。

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