甘い恋の始め方
廊下で会っても軽く会釈する程度。
300人を超える従業員がいるのだから覚えていないはず。

(だけど、彼のような人が婚活パーティーに参加するなんておかしい。もしかしてさくら?
でもスタッフのあずさは、おそらく彼のことを私に勧めていたんだから、さくらはないか……)

理子が考えている中、スタッフの女性が挨拶を済ませていた。

挨拶が終わると、スープ、前菜と料理が運ばれてくる。

(確かに久我副社長なら、最高のハイステータスに違いない)

しかし考えれば考えるほど不思議になる。噂でしか知り得ていないけど、彼は女性に困っていないはずだから。

「食べられないんですか?」

またもや理子の思考の邪魔をするのは目の前の男性だ。

「えっ? いいえ。いただきます!」

理子はスプーンを手にして、黄金色のクリームスープを口にした。

食べながらもいつの間にか視線を動かしてしまう。視線の先は久我副社長。

まだ一度も目が合っていないから、こちらにはまったく興味がないのだろう。

食事中ずっと、久我副社長は近くの女性たちから話しかけられていた。

(笑顔が爽やかで、会話もスマート。おそらく女性慣れしているはず。付き合った女性は両手では数えきれないとみる)



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